外国人材の受け入れ制度が、2027年4月に大きく変わります。1993年から続いてきた技能実習制度が発展的に解消され、人手不足分野での人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度がスタートするためです。2026年には施行日前申請の受付も始まりました。「技能実習生は今後どうなるのか」と不安を感じている人事担当者もいるでしょう。新制度では転籍の容認や日本語要件の導入など、受け入れ企業が押さえるべき変更点が多岐にわたります。そこで本記事では育成就労制度の概要や他制度との違い、受け入れの流れなどをわかりやすく解説していきます。
育成就労制度とは?制度の概要をわかりやすく解説
まずは制度の基本を押さえましょう。ここでは定義と目的、施行スケジュール、根拠となる法律と運営機関について順に解説します。
育成就労制度の定義と目的
育成就労制度とは、人手不足分野で外国人を受け入れ、原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材に育成する制度です。目的は「人材育成」と「人材確保」の2つになります。従来の技能実習制度は国際貢献を目的としていましたが、実際には人手不足を補う役割を担っており、目的と実態の乖離が指摘されてきました。そこで技能実習制度を抜本的に見直す形で創設されたのが、育成就労制度です。
施行日は2027年4月1日|施行までのスケジュール
施行日は2027年4月1日です。日程は政令で正式に定められており、制度の準備は数年前から段階的に進められてきました。流れを順に見ていきましょう。
2024年6月の改正法公布から2026年1月の分野別運用方針決定までの流れ
出発点は、2023年11月に政府の有識者会議がまとめた最終報告書です。これを受けて改正入管法などが成立し、2024年6月21日に公布されました。2025年3月11日には特定技能制度と育成就労制度に共通する基本方針が閣議決定され、同年9月には関係省令も公布されています。さらに2026年1月23日、分野別運用方針が閣議決定されました。翌2月には運用要領も公表済みです。
すでに始まっている施行日前申請(監理支援機関の許可・育成就労計画の認定)
一部の手続きは、すでに受付が始まっています。出入国在留管理庁は、2026年4月15日から監理支援機関の許可に係る施行日前申請を受け付けると公表しました。育成就労計画の認定に係る施行日前申請は、2026年9月1日からの受付です。申請先はいずれも外国人技能実習機構となり、施行直後から受け入れを始めたい企業は、この日程を前提に準備を進めなければなりません。
根拠となる法律と運営機関(育成就労法・外国人育成就労機構)
根拠法は改正入管法と育成就労法の2つです。育成就労法の正式名称は「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」といい、従来の技能実習法を改正して題名を改めたものになります。制度の運営は、外国人技能実習機構を改組した外国人育成就労機構が担う形となりました。主な役割は、計画の認定や実地検査などです。
育成就労制度の主な仕組みとポイント
続いて、制度の具体的な仕組みを確認しましょう。在留期間や対象分野、日本語要件など、受け入れ企業の実務に直結するポイントを順に整理しました。
在留期間は原則3年で特定技能1号水準への育成が目標
在留期間は原則3年です。技能実習にあった1号から3号の区分は廃止され、通算3年の育成就労計画を作成する仕組みに変わります。目標は技能検定3級や特定技能1号評価試験などへの合格です。なお、移行に必要な試験に不合格となった場合でも、一定の要件のもとで最長1年の在留継続が認められます。
受け入れ対象は17分野で「職種・作業」から「分野・業務区分」へ
受け入れの単位も変わりました。技能実習制度の細かな「職種・作業」から、育成就労制度では「分野・業務区分」という単位に改められています。分野は特定技能制度の特定産業分野と原則一致しますが、国内での育成になじまない分野は対象外です。具体的に対象分野と例外を順に確認しましょう。
育成就労の対象17分野一覧
2026年1月23日の分野別運用方針の閣議決定により、対象は次の17分野となりました。
- 介護
- ビルクリーニング
- リネンサプライ
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 宿泊
- 鉄道
- 物流倉庫
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 林業
- 木材産業
- 資源循環
このうちリネンサプライ・物流倉庫・資源循環は、特定技能制度とあわせて新たに追加された分野です。
特定技能のみの対象となる2分野(航空・自動車運送業)
特定技能制度の対象は19分野あります。そのうち航空と自動車運送業の2分野は育成就労の対象外とされており、これらの分野では特定技能の在留資格を活用することになります。自社の業種は分野別運用方針で確認してください。
労働者派遣が認められるのは農業・漁業のみ
育成就労では直接雇用が原則です。労働者派遣による受け入れが認められているのは、農業分野と漁業分野の2分野に限られます。
日本語能力の要件は就労開始前A1相当から育成終了時A2相当へ
技能実習制度では原則として求められていなかった、就労開始前の日本語要件が導入されました。就労開始前までに日本語能力A1相当以上の試験に合格するか、原則として認定日本語教育機関の就労課程で100時間以上の日本語講習を受講する必要があります。A1相当は、日本語能力試験のN5程度にあたります。その後の目安は、分野別運用方針で次のように示されました。
- 就労開始前:A1相当(試験合格または所定の講習の受講)
- 1年経過時:A1相当以上の試験を受験
- 本人意向による転籍時:A2.1相当以上
- 育成就労終了時:A2.2相当以上
また、受け入れ企業には、育成期間中に原則としてA2相当の日本語講習を100時間以上受講する機会を提供することも求められます。分野によっては、より高い日本語能力が必要となる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
本人意向による転籍が一定条件で可能に
技能実習制度では、本人意向の転籍は原則不可でした。育成就労制度では、同じ業務区分内であれば一定の要件を満たしたうえで本人の希望による転籍が認められます。主な要件は、分野ごとに定められた転籍制限期間を超えて就労していることと、技能・日本語能力の試験に合格していることです。さらに、転籍先が優良な育成就労実施者であることや、転籍者の受入割合が一定の範囲内であることなども求められます。
転籍制限期間は分野ごとに異なり、介護や建設、外食業など8分野は2年、農業や宿泊など9分野は1年です。ただし、2年の分野でも受け入れ企業の判断で1年に短縮できます。1年を超える転籍制限期間を設定する場合には、昇給などの待遇向上措置が必要です。また、転籍元の企業が負担した初期費用については、所定の基準に基づき転籍先から一定額の補填を受ける仕組みが設けられています。暴行やハラスメントなど、やむを得ない事情がある場合は、転籍制限期間に関係なく転籍が認められます。
送出機関の規制強化と費用負担ルール
技能実習制度では、外国人が送出機関に高額な手数料を支払い、借金を抱えて来日する問題が国際的に批判されてきました。そこで育成就労制度では、原則として二国間取決め(MOC)を作成した国からのみ受け入れを行います。外国人が送出機関に支払う費用は、月給の2か月分が上限です。さらに監理支援機関に支払う監理支援費は、外国人本人から徴収できません。
監理団体から「監理支援機関」となり、許可基準が厳格化
監理団体は「監理支援機関」へと再編されます。監理支援機関は許可制であり、現在の監理団体も新たに許可を受けなければ監理支援事業を行えません。主な許可基準は次のとおりです。
- 外部監査人を設置していること
- 債務超過がないこと
- 原則として2者以上の受け入れ企業を監理支援すること
- 監理支援事業の実務に従事する常勤役職員が2人以上いること
- 常勤役職員数が、受け入れ企業数を8で除した数および外国人数を40で除した数のいずれも超えていること
- 外国人からの相談に適切な言語で対応できる体制を整えていること
このほか、分野によっては上乗せ基準も設けられているため、許可申請前に確認しておきましょう。
受け入れ人数枠と分野別の受入れ見込数
企業ごとの人数枠は、常勤職員の数に応じて決まります。区分の廃止に伴い、枠は1年目から3年目までの合計人数に適用されるのが特徴です。地方の優良な企業が優良な監理支援機関の支援を受ける場合には、人数枠を拡大する措置も設けられました。国全体では分野ごとに受入れ見込数が定められ、受け入れの上限として機能します。
育成就労制度と技能実習制度・特定技能制度の違い
ここでは技能実習制度・特定技能制度との違いと、特定技能へのキャリアパスを解説します。
技能実習制度との違い
最大の違いは目的です。技能実習制度が国際貢献を目的としていたのに対し、育成就労制度は人材育成と人材確保を目的としています。主な違いは次のとおりです。
- 目的:国際貢献(技能移転)から人材育成・人材確保へ
- 在留期間:最長5年から原則3年へ
- 本人意向の転籍:原則不可から一定条件で可能へ
- 日本語要件:原則なし(介護職種を除く)からA1相当以上へ
- 監理の担い手:監理団体から監理支援機関へ
制度の性格そのものが大きく変わりました。
特定技能制度との違い
特定技能制度は、即戦力となる外国人材を受け入れるために2019年に創設された制度です。育成就労制度の施行後も、適正化を図ったうえで存続します。育成就労が「育てる段階」なら、特定技能は「即戦力として働く段階」といえるでしょう。在留期間にも違いがあります。特定技能1号は通算5年が上限で、特定技能2号には更新の上限がありません。家族の帯同は育成就労では原則認められない一方で、特定技能2号では要件を満たせば可能です。
育成就労から特定技能1号・2号へのキャリアパス
両制度は一体的に設計されています。育成就労で原則3年間働き、技能検定3級等または特定技能1号評価試験と、日本語能力A2.2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)に合格すれば、特定技能1号への移行要件を満たすことができます。ただし、移行は自動ではなく、在留資格の変更許可を受ける必要があり、また、育成就労の途中で移行する場合は、現在の受入れ企業での就労期間についても一定の条件があります。その後、対象分野で求められる試験や実務経験などの要件を満たせば、特定技能2号へ進む道も開かれます。
育成就労制度のメリット・デメリット
育成就労のメリットとデメリットを整理しましょう。外国人労働者側のメリットもあわせて確認しておくと、採用や定着の施策を考えやすくなります。
受け入れ企業のメリット
企業側の主なメリットは3つです。長期雇用への道筋と日本語力、業務の幅広さの順に見ていきましょう。
特定技能へ移行し長期雇用につなげやすい
育成就労は特定技能1号への移行を前提に設計されているため、育てた人材に特定技能として引き続き働いてもらえる可能性が高まります。技能実習は「修了後は帰国」が制度上の原則でした。自社で育てた人材が定着しやすくなる点は、大きな変化です。
就労開始時点で基礎的な日本語力がある人材を受け入れられる
就労開始前にA1相当の日本語能力が求められます。基礎的な日本語を理解できる人材を受け入れられるため、現場での指導の負担軽減も期待できるでしょう。育成期間中も段階的に日本語の水準を高めていく設計です。
業務区分の範囲内で幅広い業務に従事させられる
技能実習では、職種・作業ごとに業務の範囲が細かく限定されていましたが、育成就労では業務区分の範囲内であれば、関連する業務も含めて幅広く従事させられます。ただし、必須業務を全体の3分の1以上、安全衛生業務を10分の1以上とする時間配分のルールがある点には注意が必要です。
受け入れ企業のデメリット・注意点
一方で、企業側の負担やリスクが増す面もあります。特に注意したいのは次の2点です。
転籍による人材流出のリスク
本人意向の転籍が認められるため、育成した人材が他社へ移ってしまうおそれがあります。賃金や職場環境で見劣りすれば、転籍制限期間が過ぎた段階で人材を失いかねません。定着には適正な賃金設定やキャリアの見通しを示すことが重要です。
費用負担と事務負担の増加
送出機関に支払う費用の本人負担に上限が設けられたことで、受け入れ企業側の負担が増える可能性があります。監理支援費も、本人ではなく企業が負担するものです。加えて、育成就労計画の作成や分野別協議会への加入といった手続きにも対応しなければなりません。
外国人労働者にとってのメリット
外国人労働者にとっては、権利保護の強化が大きなメリットです。転籍の自由も一定程度広がりました。送出機関への手数料の上限設定により、多額の借金を背負って来日する事態の防止も図られています。特定技能へ進めば、日本で長く働くキャリアも描きやすくなるでしょう。
育成就労外国人を受け入れる流れ
続いては、受け入れまでの流れを6つのステップで解説します。早めに全体像をつかんでおきましょう。
ステップ1:受け入れ分野・業務区分を確認し分野別協議会に加入する
まずは自社の事業が育成就労の対象17分野のどれに該当し、どの業務区分で受け入れるのかを確認します。分野によっては独自の上乗せ基準もあるため、事前に確認しておきましょう。また、原則として分野別協議会への加入が育成就労計画の認定要件となります。ただし、分野によっては所定の代替措置が認められる場合もあります。
ステップ2:受け入れ方式(監理型・単独型)を決め監理支援機関を選ぶ
受け入れ方式は2種類です。1つは監理支援機関を通じて受け入れる「監理型」で、もう1つは企業が単独で受け入れる「単独型」と呼ばれます。監理型では、許可を受けた監理支援機関から計画作成の支援や定期的な監査などを受けることになります。
ステップ3:送出機関を通じて人材を選考し雇用契約を結ぶ
次に、送出機関を通じて候補者を募集し、面接などで選考します。送出機関は原則として、二国間取決めを作成した国から認定を受けた機関でなければなりません。採用が決まれば、直接雇用契約を結ぶ流れです。育成就労外国人も労働者であるため、労働関係法令や社会保険は日本人と同様に適用される点も押さえておきましょう。
ステップ4:育成就労計画を作成し外国人育成就労機構の認定を受ける
外国人ごとに、3年間の育成就労計画を作成します。計画には、育成就労の終了時に到達すべき技能と日本語能力の目標を定めなければなりません。認定前の受け入れは不可です。
ステップ5:在留資格認定証明書の交付申請と入国
計画の認定後は、地方出入国在留管理局へ在留資格認定証明書の交付を申請します。認定とは別の手続きなので注意しましょう。証明書の交付後は、外国人本人が現地の日本大使館などで査証を申請し、来日する流れです。
ステップ6:入国後講習・就労開始・1年目の試験受験
入国後は、日本語や生活ルールなどを学ぶ入国後講習を受講します。講習を終えると、いよいよ就労開始です。就労開始からおおむね1年以内には、技能検定基礎級等とA1相当の日本語試験を受験させなければなりません。この1年目の試験は、合格しなくても育成就労を継続できます。とはいえ、転籍要件や特定技能への移行を見据えると、計画的な学習支援が欠かせないでしょう。
技能実習生を受け入れ中の企業への影響と経過措置
施行日をまたぐ扱いも気になるところです。ここでは経過措置の内容を3つに分けて見ていきましょう。
施行日時点で在留中の技能実習生の扱い
2027年4月1日の時点で技能実習を行っている技能実習生は、引き続き技能実習を継続できます。すぐに育成就労へ切り替える必要はありません。
2027年3月末までに認定申請した場合の扱い
施行日前に技能実習計画の認定申請を行った場合も、経過措置の対象になります。対象となるのは、2027年3月31日までに認定申請がなされ、原則として2027年6月30日までに技能実習を開始する技能実習生です。この条件を満たせば、施行日後に入国しても技能実習を行えます。
技能実習3号へ移行するための条件
施行日以降に技能実習3号へ移行するには、施行日時点で技能実習2号の活動を1年以上行っていることが必要です。この要件を満たさなければ、3号へは進めません。その場合は、特定技能1号への移行など別の選択肢を早めに検討しておくとよいでしょう。
育成就労制度に関するよくある質問
最後に、よくある疑問をQ&A形式でまとめました。
育成就労制度はいつから始まりますか?
2027年4月1日から始まります。ただし監理支援機関の許可などに係る施行日前申請の受付は、2026年からすでにスタートしました。
技能実習制度は完全に廃止されますか?
育成就労制度の施行にあわせて発展的に解消される予定です。ただし経過措置により、施行日時点で実習中の人などは引き続き技能実習を続けられます。
育成就労と特定技能は別の在留資格ですか?
はい、別の在留資格です。育成就労は新設の在留資格であり、特定技能1号・2号とは区別されています。育成就労から特定技能1号へ移るには、試験合格などの要件を満たしたうえで変更申請が必要です。
育成就労で家族の帯同は認められますか?
育成就労の在留資格では、原則として家族の帯同は認められていません。特定技能1号へ移行した場合も同様ですが、特定技能2号に移行すれば、所定の要件を満たす配偶者や子どもについて家族滞在が認められる場合があります。
試験に不合格だった場合はどうなりますか?
特定技能1号への移行に必要な技能・日本語能力の試験に不合格となった場合でも、一定の要件を満たせば最長1年間の在留継続が認められる可能性があります。ただし、自動的に延長されるわけではないため、要件や必要な手続きを事前に確認することが大切です。
育成就労制度を理解し早めに受け入れ準備を進めよう
育成就労制度は、技能実習制度に代わって2027年4月1日に施行される新しい外国人材の受け入れ制度です。目的は人材育成と人材確保へと転換されました。原則3年の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育てる点や、本人意向の転籍が認められる点など、受け入れ企業に関わる変更点は多岐にわたります。経過措置の内容も踏まえ、技能実習から育成就労への切り替え時期を見極めることも大切です。施行日前申請の受付もすでに始まりました。早めに情報を集め、育成方針の整理や待遇の見直しを進めることが欠かせません。長く活躍してもらえる職場づくりに取り組みましょう。
育成就労制度や特定技能を活用した外国人採用にお悩みの方は、株式会社BMキャリアへお気軽にご相談ください。制度の最新情報を踏まえ、自社に合った受け入れ方法をご提案します。

