経済産業省の試算では、2030年に最大約79万人ものIT人材が不足するとされており、国内だけの人材確保には限界が見え始めました。しかし、ベトナムやインドをはじめとするアジア各国には優秀なエンジニアが存在しているのも事実です。
そこで本記事では、外国人ITエンジニアを採用するメリットや在留資格の基礎知識をはじめ、採用フロー、定着支援までを網羅的に解説していきます。
外国人ITエンジニアの採用が注目される背景
なぜ今、外国人ITエンジニアの採用が注目されているのでしょうか。その背景には、国内のIT人材不足という構造的な課題があります。人材不足の実態と外国人エンジニアの現状を確認していきましょう。
深刻化するIT人材不足と2030年問題
日本のIT業界では、慢性的な人材不足が続いています。少子高齢化による労働人口の減少に加え、DX推進やAI活用の広がりが需要をさらに押し上げている状況です。
経済産業省の調査に見るIT人材の需給ギャップ
経済産業省が公表した「IT人材需給に関する調査」によると、2030年にはIT人材の需給ギャップが約16万人から最大79万人に達する見込みとなっています。国内採用だけではこのギャップを埋められず、外国人ITエンジニアの活用が有力な選択肢として浮上してきました。
DX推進・AI活用で高まる先端IT人材への需要
ビッグデータやIoT、人工知能といった先端技術の活用は各産業で加速する一方です。政府はこれらの技術を扱える人材を「先端IT人材」と位置付け、外国人も積極的に受け入れる方針を打ち出しました。こうした動きが外国人エンジニア採用の追い風になっています。
外国人ITエンジニアを採用するメリット
外国人ITエンジニアの採用には、人材確保以外にもさまざまなメリットがあります。ここでは代表的な4つの利点を紹介します。
優秀なIT人材を確保できる
アジア各国には、自国のIT需要に対して人材の供給が上回っている国が少なくありません。高い技術力を持ちながら母国では就職競争が激しいエンジニアが、日本に流れてくる構図が生まれています。技人国ビザで来日する外国人エンジニアは平均年齢が若い傾向にあり、長期的な戦力として期待できるでしょう。
多様な視点がイノベーションを生む
異なるバックグラウンドを持つメンバーが加わることで、日本人中心のチームでは生まれにくかった発想が出やすくなります。グローバルな視点で課題を捉え直し、プロダクトの品質向上や新規事業創出につながるケースもあるでしょう。
グローバル展開・海外案件への対応力が高まる
英語や母国語に堪能な外国人エンジニアが社内にいれば、海外クライアントとのやり取りやオフショア開発のブリッジ役として活躍してもらえます。海外拠点の設立時にも、現地文化を理解した人材がいることは大きなアドバンテージとなるでしょう。
外国人ITエンジニアに必要な在留資格を理解する
外国人ITエンジニアを採用する上で、在留資格の理解は避けて通れないテーマです。ここでは、エンジニア採用に関係する主な在留資格と、それぞれの要件を解説します。
「技術・人文知識・国際業務」ビザの要件と取得条件
外国人がITエンジニアとして日本で働く場合、一般的に利用されるのが「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国)の在留資格です。取得にあたってはいくつかの要件を満たさなければなりません。
学歴要件と実務経験要件
技人国ビザを取得するには、業務に関連する分野を大学や専門学校で専攻していることが基本的な条件となります。学歴要件を満たさない場合でも、同分野で10年以上の実務経験があれば申請可能です。
IT関連の資格・試験合格による要件緩和
情報処理技術に関する国家試験や、法務省が告示で指定する各国のIT資格に合格している場合は、学歴や実務経験の要件が免除されることがあります。ベトナムやインドなどの主要IT人材輩出国では対象となる資格試験が設けられており、積極的に活用したい制度です。
「高度専門職」ビザの仕組みとポイント制
より高度なスキルを持つ外国人エンジニアを迎える際には、「高度専門職」の在留資格も選択肢に入ります。この制度はポイント制で運用されており、一定の条件を満たすと優遇措置が受けられる仕組みです。
高度人材ポイント制の計算方法
学歴・職歴・年収・年齢・研究実績などの項目ごとにポイントが付与され、合計70点以上で「高度専門職」の在留資格を申請できます。計算方法は出入国在留管理庁のサイトで公開されているため、候補者の情報をもとに事前にシミュレーションしておくとよいでしょう。
高度専門職ビザで得られる優遇措置
高度専門職に認定されると、在留期間が最長5年(高度専門職2号であれば無期限)になるほか、配偶者の就労制限が緩和されるなどのメリットがあります。永住許可の申請要件が緩和される点も、外国人エンジニアにとっては大きな魅力です。企業側も長期雇用を見据えやすくなるため、双方にとって有利な制度といえるでしょう。
その他の在留資格(永住者・定住者・特定活動)
「永住者」「日本人の配偶者等」「定住者」といった在留資格を持つ外国人は、就労に制限がありません。こうした在留資格を保有する候補者であれば、ビザ手続きの負担なくエンジニアとして雇用可能です。「特定活動」の在留資格でエンジニアとして働ける場合もありますが、法務大臣の個別許可が必要となるため注意が求められます。
ビザと在留資格の違いを正しく理解する
「ビザ」と「在留資格」は混同されがちですが、厳密には異なる概念です。ビザ(査証)は入国前に在外公館で発行される推薦状のようなものであり、在留資格は入国後に日本での活動内容を定める許可を指します。採用担当者がこの違いを正確に把握しておけば、手続き全体の見通しが立てやすくなるでしょう。
外国人ITエンジニアの採用方法5選
外国人ITエンジニアの採用チャネルには複数の選択肢があり、それぞれコストが異なります。自社の方針や予算に合わせて最適な方法を選びましょう。
外国人専門の人材紹介会社を利用する
外国人採用に特化した人材紹介会社を利用すれば、業者によっては在留資格の確認やビザ申請のサポートまで一括で依頼できます。紹介手数料は会社によって異なりますが、採用スピードと成功率の高さを考えると費用対効果に優れた選択肢です。
外国人向け求人サイト・ジョブボードに掲載する
GaijinPot JobsやJobs in Japanといった外国人向けの求人サイトに掲載する方法もあります。掲載費用を抑えながら幅広い候補者にリーチできる反面、応募者のスクリーニングに工数がかかる点は考慮が必要です。
ダイレクトリクルーティング・SNS採用を活用する
LinkedInなどのグローバルSNSを活用し、候補者に直接アプローチするダイレクトリクルーティングも選択肢に入ります。スカウト文面を英語で作成し、自社の技術環境やキャリアパスを具体的に訴求しましょう。
大学・専門学校との連携で新卒外国人を採用する
国内の大学・専門学校に在籍する留学生をターゲットにする方法も見逃せません。日本での生活経験がある留学生は日本語力や文化理解の面でアドバンテージがあり、入社後のオンボーディングもスムーズに進みやすいのが特徴です。
社員紹介(リファラル採用)を仕組み化する
すでに外国人エンジニアが在籍している企業であれば、リファラル採用の仕組みを整えることも効果的でしょう。同じ国籍やコミュニティのつながりを通じて紹介される候補者は文化的な適合度が高い傾向にあり、運用も低コストで済みます。
受け入れ体制の整備とオンボーディング
採用が決まったら、次に取り組むべきは受け入れ体制の整備です。安心して業務に集中できる環境を整えることが、早期離職の防止につながります。
入社前に準備すべき社内体制
受け入れ体制の構築は、入社前の段階から着手しましょう。特に以下の2つは早めに整備しておきたい取り組みです。
メンター・バディ制度の導入
経験豊富な先輩社員をメンターやバディとして配置し、業務上の質問から生活面の相談まで気軽に頼れる窓口を設けましょう。心理的安全性が確保されれば、外国人エンジニアの定着率向上にもつながるはずです。
多言語対応の社内マニュアル整備
就業規則や業務フローのマニュアルを英語などの多言語で整備しておくと、入社直後のキャッチアップがスムーズになります。翻訳ツールの活用や社内のバイリンガル人材への協力依頼も検討してみてください。
入社後3ヶ月のオンボーディング計画
入社後の最初の3ヶ月は定着率を左右する重要な期間です。1週目は会社のルールと開発環境への慣れを優先し、1ヶ月目までに小さなタスクを任せて成功体験を積ませましょう。3ヶ月目にはプロジェクトのメンバーとして稼働できる状態を目指し、段階的に業務範囲を広げていくのが効果的です。
日本語研修・ビジネス日本語教育の提供
技術力が高くても日本語でのコミュニケーションに課題がある場合は、企業負担で日本語研修を提供することを推奨します。ビジネス場面で使える敬語表現やメールの書き方を学ぶ機会を設けることで、チーム内の意思疎通が円滑になるはずです。
異文化理解研修で既存社員の意識を変える
受け入れ体制の整備は、外国人エンジニアだけに努力を求めるものではありません。既存の日本人社員に対しても異文化理解研修を実施し、多様な働き方や価値観を尊重する風土を醸成することが大切です。
外国人ITエンジニアの定着率を高める5つの施策
採用はゴールではなくスタートラインにすぎません。外国人ITエンジニアに長く活躍してもらうためには、定着を見据えた継続的な取り組みが求められます。
キャリアパスを明確に提示する
入社時にキャリアパスを具体的に示すことで、エンジニア自身が将来の成長イメージを描けるようになるでしょう。「3年後にリーダー、5年後にマネージャー」といった段階的なロードマップを用意しておくと効果的です。
定期的な1on1面談でギャップを早期発見する
月に1回程度の1on1面談を設け、業務上の悩みや生活面での困りごとを早い段階でキャッチしましょう。問題が大きくなる前に対処できれば、突然の離職を未然に防げるはずです。
生活面のサポート体制を充実させる
住居探しや銀行口座の開設など、日本での生活に慣れるまでのサポートは企業の信頼獲得に直結します。生活が安定してこそ業務にも集中できるため、初期の生活支援は必要な投資と捉えるべきでしょう。
公平な評価制度と給与体系を整備する
国籍に関係なく成果を正当に評価する仕組みは、外国人エンジニアのモチベーション維持に欠かせません。日本人社員と同等の基準で昇給・昇格の機会を提供することが、長期定着への信頼につながります。
社内コミュニティ・交流イベントで帰属意識を醸成する
外国人エンジニア同士が情報交換できる社内コミュニティや、部署を超えた交流イベントの開催も有効な施策です。孤立を防ぎ、会社への帰属意識を高めることで、定着率の向上が見込めるでしょう。
外国人ITエンジニアの採用でよくある質問(FAQ)
外国人ITエンジニアの採用に関して、担当者からよく寄せられる質問と回答をまとめました。
日本語が話せない外国人エンジニアでも採用できますか?
在留資格の取得要件に日本語能力は含まれていないため、日本語が話せなくても採用自体は可能です。ただし、社内コミュニケーションをどの言語で行うかを事前に決め、必要に応じて通訳やバイリンガル人材を配置する工夫が求められます。
在留資格の更新手続きは企業側が行う必要がありますか?
更新手続きの申請は外国人本人が行うのが原則ですが、企業側が書類を準備したり行政書士に依頼したりするのが一般的です。在留期間を管理し、更新時期を余裕を持って把握しておくようにしましょう。
外国人エンジニアの給与は日本人と同額にすべきですか?
在留資格の審査では、同等の業務に従事する日本人と同水準以上の給与を支払うことが要件となっています。国籍を理由に低く設定すると不許可となるリスクがあるため、公平な給与体系の整備は必須です。
初めての外国人採用で最初に相談すべき窓口はどこですか?
外国人採用に特化した人材紹介会社や、入管手続きに精通した行政書士への相談がおすすめです。助成金や支援制度については、ハローワークの外国人雇用管理アドバイザーにも問い合わせできます。
外国人ITエンジニア採用は正しい準備で成功させられる
外国人ITエンジニアの採用は、制度理解・受け入れ体制の整備・定着支援の3つが揃ってはじめて成功するものです。在留資格の要件把握から採用チャネルの選定、オンボーディング、長期的なキャリア支援まで一貫した取り組みが欠かせません。本記事を参考にすれば、初めての外国人採用でも着実に成果を出せるはずです。
株式会社BMキャリアでは、外国人ITエンジニアの採用に関するご相談を承っております。在留資格の手続きから人材紹介や定着支援まで一括対応可能です。まずはお気軽にご相談ください。

